誰もがAIで金融分析する時代、Agentの本当の参入障壁は何か?
最近SNSで、サイバーパンク風の金融Agentをよく見かける。黒地にネオン、動くローソク足、洗練されたダッシュボード。数行のVibe Codingで見栄えのいい画面が作れる。見続けていると、一部は同じ工場から出てきた「相場プレーヤー」に思えてくる。汎用的な市況データをつなぎ、LLMにその場で解説させ、別のUIで再生するだけだ。
リアルタイム相場もテクニカル指標も、注文フロー分析も役に立つ。ただ、アニメーションを止めたあとに「強気」「弱気」という言葉だけが残るなら、その判断を支える研究はどこにあるのだろう。
相場データは誰でも買えるし、LLMも使える。世界中の専門家が競う金融市場で、そのAgentは一体誰の研究判断を持ち込んでいるのか。きれいなレポートだけで勝ち抜けるのか。LLMに送る数行のプロンプトが、本当に競争上の堀になるのか。
自作のNuvexLensの開発ノートを読み返して、むしろ紹介したくなったのは、うまくいかなかった二つの結果だった。
処理は完了したのに、新モデルは昇格できなかった
10月の本番環境での受け入れ確認では、中国株と米国株の自動最適化ジョブがどちらも最後まで実行され、新しい候補も生成された。それでも両方とも市場レジームに応じたシグナルの方向反転を検知するゲートにかかった。つまり、その市場状態では統計的なシグナルの向きが逆転するリスクがあるため、新しい重みを既存モデルに上書きさせなかった。単に指数の上げ下げを予測し損ねた、という意味ではない。
ジョブが正常終了したことと、モデルを本番採用できることは別の審査だ。候補は候補のまま、稼働中の旧モデルはそのまま残った。
私が投資調査ツールに求めるのは、時間をかけて蓄積した履歴データと検証済みの研究モデルだ。同じような相場の形が再び出たとき、過去に何回起こり、その後の結果がどう分布し、どの市場状態でシグナルが失敗したかを振り返れるようにしたい。歴史が必ず繰り返すわけでも、モデルが毎回当たるわけでもない。それでも、計算・検証・修正の記録は、磨いたプロンプトだけではその場で作れない。
絞り込むほど、10日後の結果は悪化した
別の米国株の履歴分析では、43取引日を対象に選別の閾値を比較した。厳しくすると3日後、5日後の一部指標は改善したが、10日後の平均イベントリターンは**−0.295%から−0.456%へ悪化**した。10日イベントの重複除去後の件数は、二つの条件でそれぞれ2,002件と1,651件だった。
これはシグナルから10日後までの価格変化であって、実口座の損失額ではない。選別条件を変えればサンプルの構成も変わる。レコードを重複除去しても、10日間の保有期間どうしは重なり得る。短期だけを見て「厳しくすれば必ず良くなる」とは言えない。
さらに収益の計算を点検して気づいたことがある。シグナル日ごとにまとめた保有期間のイベントリターンを、そのまま実際のポートフォリオの日次基準価額として扱ってはいけない。その系列でシャープレシオやドローダウンを解釈すると、見かけは立派でも測っている対象が違う。
私がAgentに持たせたいのは、こういう都合の悪い記録だ。採用されなかった候補、短期では良くても長期では崩れた評価、集計定義から見直すべき指標。公開データと丁寧な研究コードでも積み上げられる。自分で確かめたい人には、公開ETFを使ったRank ICとグループ別リターンの複数期間検証もある。
Agentは説明役。研究はその場しのぎで作らない
MetaのパーソナルAgentであるMuseから、認可済みREST APIを使ってNuvexLensが以前公開した研究スナップショットを読み取る実験も行った。ただしこれは別バッチの接続確認であり、そこに含まれる個々の結果と先ほどの二つの履歴事例の対応付けはまだできていない。APIは先にできていた研究成果をAgentへ届けるだけ。研究自体は質問される前に行われる。
グラフを描けても、その予測が利益になるとは限らない。 今は三つの問いを大事にしている。誰が計算したのか。いつ計算したのか。過去の同様の判断はどうだったのか。ここに答えられないなら、LLMがいくら流暢でも最初の「堀」の問いにはまだ答えていない。
注:ここで述べたのは過去の研究・実装検証であり、一般的な金融Agentと自作モデルを同じ条件で比較した収益試験ではない。投資助言ではない。